若手公務員が立ち上げた地域商社型の非営利法人「一般社団法人 Social Up Motegi」@栃木県茂木町

 

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一般社団法人Social Up Motegi

一般社団法人 Social Up Motegi(通称:SUM)は、栃木県茂木町の若手公務員有志によって2020年4月に設立された地域商社型の非営利法人です。設立の背景には、「町のために何かできることをしたい」「子どもたちに自慢できる町にしたい」という職員たちの強い思いがあり、地方創生に関する勉強会をきっかけとして組織されました。活動の根底には、「20年後の子どもたちにとって、誇れるふるさとをつくる」「“かっこいい田舎”を実現する」といった明確なビジョンがあります。

SUMの特徴は、町の森林や農畜産物などの地域資源を活かした収益事業を通して、まちの活性化と持続可能な財源確保を両立している点にあります。法人格は一般社団法人であり、定款には「役員の無報酬」や「利益分配の禁止」など、公務員としての立場と活動の中立性を守るための仕組みが整えられており、行政の外側からまちづくりを支える新しいモデルとして注目されています。

主な取り組みのひとつが、茂木町の豊富な森林資源(町面積の約65%が森林)から出る間伐材を活用した商品開発です。例えば、木製の積み木「もっくいっく」、子ども向けの椅子「もっくいっす」、焚き火用の木製トーチなどが、地元の木工職人との連携のもとで商品化されています。これらの商品は町内の道の駅やインターネット通販サイト(BASEなど)で販売され、茂木町内の保育施設における遊具としての採用や、ふるさと納税の返礼品などにも活用されています。

また、SUMは農畜産業分野でも注目すべき取り組みを進めています。その一つが、耕作放棄地を活用して放牧されている黒毛和牛をブランド化した「もてぎ放牧黒毛和牛」です。この事業は、町内の瀬尾ファームと連携して始まり、クラウドファンディングを通じて約300万円の資金を調達することにも成功しました。ブランド化により、町産和牛の付加価値を高め、農業の新たな担い手の育成や、持続可能な畜産経営モデルの構築にも貢献しています。

これらの事業で得られた純利益のうち、半分は茂木町へ寄附され、一般財源として地域の公共サービスなどに活用されています。たとえば、初年度の売上は約300万円、純利益は約12万円となり、そのうちの6万円が町に寄附されました。このような形で「町のための事業」が、具体的な数字として還元されている点は、他の地域にも応用可能な好事例といえます。

さらにSUMは、町内外の大学生や地域住民と連携しながら、イベントの企画や商品開発なども進めており、地域ぐるみでの共創の場を広げています。当初は4名のメンバーでスタートしましたが、現在では約10名体制となっており、すべての活動はボランタリーかつ月に2回程度のミーティングを中心に進められています。今後は、森林や畜産物に加えて、川魚などの地域資源も新たな特産品としてブランド化を検討しており、活動の幅はさらに広がりつつあります。

このように、一般社団法人 Social Up Motegiは、「地域の中で、小さくても確かな変化を起こす」ことを大切にしながら、持続可能なまちづくりと地域経済の循環を実現するモデルとして、今後の展開が大いに期待されています。