森林浴×博物館。美術館や博物館での鑑賞を通じて心と体の健康を整える「博物館浴®」

 

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博物館の癒やし効果を科学的に検証 健康増進の新たな価値を創造する「博物館浴®」(朝日新聞SDGs ACTION!・2025年6月16日)

「博物館浴®」は、美術館や博物館での鑑賞を通じて心と体の健康を整えることを目的とした新しい取り組みであり、森林浴になぞらえて名付けられました。日本では博物館の来館頻度が低い一方で、コロナ禍以降、ストレスや不安などの精神的課題が深刻化しており、博物館を健康増進の場として活用できないかという観点から研究が始まりました。

この「博物館浴®」では、全国90館以上で中学生から高齢者まで約1,300人を対象に、鑑賞前後の血圧や脈拍などの生理指標、心理状態の変化を測定しました。その結果、高血圧の人の血圧が下がり、低血圧の人は上昇するなど、自律神経のバランスが整う傾向が見られました。また、心理面では、疲労感や緊張、不安などのネガティブな感情が減り、活気や安心感が高まるといったポジティブな変化が確認されました。医師からも交感神経と副交感神経のバランス改善が評価されています。

鑑賞時間は10分から20分程度でも効果があり、黙って静かに鑑賞するスタイルでも、会話をしながらの鑑賞でも同様にリフレッシュ効果が得られるとされています。さらに、オンライン鑑賞でも同様の回復効果が見込まれています。

すでに福島県の諸橋近代美術館や奈良県立美術館などで実践されており、今年度は国立西洋美術館との連携も予定されています。企業の福利厚生や医療・福祉現場での活用も進みつつあり、産官学連携を通じて社会実装が加速しています。

この取り組みを主導する緒方智絵教授は、博物館を地域の「健康ステーション」として機能させ、今後は個人の体調や心理状態に応じた作品の推薦なども可能な仕組みを構築し、持続可能なウェルビーイングの実現に貢献していきたいと語っています。

 

SDGs ACTION

博物館の癒やし効果を科学的に検証する「博物館浴」研究。効果を実証し、新たな健康増進の選択肢を提案しています。…