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令和7年度発行の水産白書で特に気になった記事をピックアップして紹介します

 

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令和7年度発行の水産白書で特に気になった記事ピックアップ

■ 令和6年能登半島地震の影響と復旧

令和6年(2024年)1月1日、石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、津波や地盤の隆起によって沿岸の漁港施設や漁船、加工場、卸売市場などに甚大な被害がもたらされました。漁業者は操業不能や出荷停止の状態に追い込まれ、地域の水産業は深刻な影響を受けました。

政府は地震発生直後から対応を開始し、1月下旬には「生活と生業支援パッケージ」を策定し、仮設の荷さばき場や修理施設の整備を進めました。その後、特別交付税や補正予算を通じて復旧予算が確保され、定置網やかご漁業などの一部では操業が再開されました。12月までには、被災漁港のうち7港で仮復旧工事が完了し、今後の本格復興に向けた技術検討会も設置されました。

 

■ 太平洋クロマグロ資源管理の法整備

近年、太平洋クロマグロの過剰漁獲や違法流通の事案が相次ぎ、資源管理の強化が課題となっていました。特に2023年には、漁獲報告義務を怠った事例が発覚し、関係者が有罪判決を受けたことで、法制度の見直しが急務とされました。

これを受け、令和6年には漁業法と特定水産動植物国内流通適正化法が改正され、クロマグロをはじめとする重要資源の流通管理体制が強化されました。具体的には、漁業者には漁獲物の個体数や重量の記録・保存義務が課され、港における漁獲監視を行う「漁獲監理官」が新たに設置されました。これにより、TAC(漁獲可能量)制度の実効性確保が図られています。

 

■ 赤潮の被害とモニタリング体制の強化

赤潮による漁業被害は全国で継続しており、特に養殖魚の大量死や生育不良といった影響が深刻です。近年では、八代海や橘湾などで大規模な赤潮被害が発生し、地域経済に打撃を与えています。

国はこの事態に対して、赤潮の発生予測・モニタリング体制の強化を進めています。具体的には、人工衛星やドローンによる監視、水質センサーの活用、そして現場でのリアルタイム通報体制の整備が進められています。また、足し網、生け簀の沈下、高濃度酸素の注入、赤潮駆除剤の投入など、複数の緩和策が導入されています。

 

■ 赤潮対策

赤潮対策として国が進める施策は、モニタリング技術の高度化だけでなく、赤潮の発生メカニズムや拡大要因の研究開発にも及んでいます。防除技術の実用化に向けた実証試験が行われており、広域的な情報連携によって迅速な対応を可能としています。

また、漁業者への技術指導や装置導入支援も行われており、地域独自の取り組みと国の支援策を組み合わせて、より実効性のある赤潮対策が推進されています。

 

■ ブルーカーボン

ブルーカーボンとは、海藻・海草などが大気中のCO₂を吸収し、海中に長期的に貯留する自然の炭素固定プロセスを指します。日本ではこの概念を気候変動対策として積極的に取り入れており、令和6年度には世界初のCO₂吸収量(約35万トン)の算定が公表されました。

さらに、岩手県洋野町では藻場再生によって得られたブルーカーボン量をクレジットとして販売する「ブルーカーボン・クレジット制度」が実施され、炭素市場での取引が可能となっています。今後は、全国での藻場造成や管理を通じて、CO₂吸収と漁場再生の両立を目指す取り組みが期待されています。

 

■ クロマグロ管理

太平洋クロマグロの管理については、国際機関であるWCPFCにより厳格な漁獲制限が課されており、日本はその枠内で管理を強化しています。2015年以降、小型魚の漁獲を抑制し、資源回復に取り組んでおり、2018年からはTAC制度を通じて都道府県ごとの漁獲割当管理を実施しています。

また、漁業者や市場への啓発、電子報告システムの導入などを通じて、より透明性の高い資源管理が進められています。クロマグロの再資源化は国際的な注目を集めており、日本の取り組みはそのモデルとされています。

 

■ 漁業者支援施策

自然災害や気候変動に起因する漁業被害が多発する中で、国は漁業者支援施策を多面的に講じています。特に赤潮やトド、大型クラゲなどによる被害については、調査研究、駆除技術の開発、情報提供、機材導入支援などが行われています。

さらに、「浜の活力再生プラン」など地域主体の取り組みに対しても予算措置が講じられ、漁業者自身の課題解決能力の強化が促されています。これらの施策は、経営安定・持続性向上・担い手確保を総合的に支えるものです。