ソーシャルデザインを語ることはとても難しいです。しかしソーシャルデザイナーとして活動していく以上は、この言葉をできる限り深く理解する必要があります。
そもそも、なぜソーシャルデザインを語ることが難しいかというと、この言葉を構成する「ソーシャル」と「デザイン」という2つの単語がそれぞれ多様な意味を持ち、かつこの言葉が組み合わさることで、さらに意味を捉えにくくなるからです。一方で、それだけソーシャルデザインが持つ意味や範囲が広いことを示していると考えられます。
ここ数年を振り返ると、CO2の過剰排出や海洋ゴミ問題などを包括した地球環境問題や、SDGsなど持続可能な社会の創造、ウェルビーイング(単に健康であるだけでなく、身体的・精神的・社会的に満たされた幸福な状態を指す)など、ヒトだけでなく社会全体に優しさを生み出す方向へ時代が進んでいくことが良いとされています。
このような社会を作るためには、クリエイティブな思考やプロセスの明確化など、従来のデザイナーが持つ力を応用することが効果的であると考えられます。一方で、日本ではデザインと言うと「スタイリング(色や形など、見た目を整える表層的なデザイン)」の意味で使われていることが多いですが、本来のデザインは、スタイリングだけに留まらず、諸問題を解決し、より良い仕組みや環境を作ることにあります。
「ソーシャルデザインの教科書」著者である村田智明氏は「ソーシャルデザインとは、一言で言うと、単なる利益追求ではなく、社会貢献を前提にしたコトやモノのデザインのことである」と整理しています。また、オーストリアのデザイナーであるヴィクター・パパネック(1923-1998)は「デザイン業界における大きな課題は使い捨てのためのデザインである。このことについてデザイナーが確たる哲学を持たなければ、デザインの対象領域を広げれば広げるほど地球環境は悪化することになってしまう」と指摘しました。
こども達だけでなく、身体障害を持つ方や貧困者、LGBTQ当事者など、さまざまなハンディキャップを抱えた人々が幸せに生きるための仕組みをクリエイティブに作り出したり、サービスそのものをデザインの力で生み出すことができ、その視点が必要なのです。
先述の通り、デザインはスタイリングだけではありません。多くの方々がギャップを感じずに活用できるサービスやシステムのデザインと、それを広く知っていただくためのコミュニケーションのデザインなど、多様な視点や環境でデザインの力が求められています。
その中でもソーシャルデザインは、社会をデザインするというイメージから、無償ボランティアと言う印象が強いですが、ソーシャルデザインも持続してこそ初めて意味がある活動になりますので、資金面でも長く続く仕組みを作ることが必要なのです。
ソーシャルデザインに関する参考情報
ソーシャルデザインとは?いま一度考えてみる
https://www.hitomiwatanabe.com/social-design-definition-part-1/
https://www.hitomiwatanabe.com/social-design-definition-part-2/
NOSIGNER 太刀川英輔──デザインとは、形をもって美しい関係をつくること
https://designing.jp/nosigner-tachikawa
【3分解説】ソーシャルデザインとは?その意味について解説!
https://sports-for-social.com/3minutes/socialdesign/
ソーシャルデザインとは・意味
https://ideasforgood.jp/glossary/socia-design/
雑誌『自遊人』掲載「日本におけるソーシャルデザインの軌跡」無料公開
https://www.jidp.or.jp/ja/2020/02/28/jiyujin201902
デザインのすすめー素晴らしき哉、デザイン的人生ー
https://shinyaiwakura.com/デザインのすすめ/2-デザインにとって大切なものは?/2-4-普遍性・先進性・奉仕性/