自身の専門の1つである「海」について、日々考えたことを連載していきます。
「変わらないこと」がリスクになる今の時代に挑戦状を叩きつける(2025年4月6日)
今、私たちは「変わらないこと」そのものがリスクになる時代を生きています。持続可能な漁業を実現するには、変わりゆく海の状況に合わせて、“人のやり方”も進化させていく必要があると考えています。
事実として、“海は変わっている”のです。たとえば、青森県ではサケの漁獲量がピーク時の100分の1にまで減少し、一方で北海道ではこれまで獲れなかったブリが獲れるようになっています。これは、気候変動や海水温の上昇、海流の変化などにより、魚の分布が大きく変わってきていることを示しています。
しかし、こうした変化が顕著になっているにもかかわらず、水産業の現場では、全国的に「変わらない」やり方が続けられている地域が少なくありません。かつて安定をもたらした伝統的な漁法や漁場へのこだわりは、今ではむしろ不安定な収入や資源の枯渇を招く要因になりつつあります。つまり、「変わらないこと」が、不安定の原因になっているのです。
「先祖代々の海を守る」という価値観は尊いものです。しかし、その海自体が変質している今、守るべき“方法”も変えなければ、本当に守りたいものを守れなくなってしまいます。
私が大切にしている「変化に適応すること」は決して「伝統を捨てること」ではなく、むしろ、「伝統を未来につなぐための挑戦」だと捉えています。
たとえば、IoTやAIを活用したスマート漁業、資源を守る“とる漁業”から“育てる漁業”への転換など、すでに“伝統と技術の融合”は少しずつ始まっています。これからは、“育てる漁業”とあわせて“変化に対応できる漁業”を取り入れていくことが重要だと感じています。
だからこそ、私は変わりゆく海に対して、「どうすればこの漁業を残せるのか」を、漁業者の皆さんと一緒に考えていきたいです。そして、漁業に関わる人々が幸せに生きていける未来のために、海の資源を最大限に活用していけたらと思っています。